ここでは、ホームページ内で紹介している賢治さんの作品を掲載しています。関連した項目と対応させながら読んでみましょう。
一九二四、八、一七、 あやしい鉄の隈取りや 数の苔から彩られ また捕虜岩(ゼノリス)の浮彫と 石絨の神経を懸ける この山巓の岩組を 雲がきれぎれ叫んで飛べば 露はひかってこぼれ 釣鐘人参(ブリューベル)のいちいちの鐘もふるえる みんなは木綿(ゆふ)の白衣をつけて 南は青いはひ松のなだらや 北は渦巻く雲の髪 草穂やいはかがみの花の間を ちぎらすやうな冽たい風に 眼もうるうるして息吹き(いぶき)ながら 踵(くびす)を次いで攀ってくる 九旬にあまる旱天(ひでり)つゞきの焦燥や 夏蚕飼育の辛苦を了へて よろこびと寒さとに泣くやうにしながら たゞいっしんに登ってくる ……向ふではあたらしいぼそぼその雲が まっ白な火になって燃える…… ここはこけももとはなさくうめばちさう かすかな岩の輻射もあれば 雲のレモンのにほひもする
山の頂上のことです。
地球は外から中に向かって、地殻、マントル、核と並んでいます。マントルの一部が溶け出したものが、マグマです。 マグマが地表に上昇する時に、途中にあった岩石を破片として取り込んだものをゼノリスと言います。捕獲岩とも呼ばれています。
石綿の別名です。石綿は、蛇紋岩などが細い糸のように変形した鉱物のことです。
イワウメ科の高山植物です。花はピンク色や白など。花びらの先は細かく分かれ、光沢のある葉が鏡のように見えることからその名がついたと云われています。
九十日。旬は一ケ月を三つに分けた十日間くくりの日数。ここでは日照りが長く続くことを表しています。