ここでは、銀河の森(早池峰山)で実際に活動する際の安全対策を、「知識編」「準備編」「当日編」に分けて、Q&A形式で説明しています。楽しく安全に野外活動にのぞむために、知っておきたいことや準備しておくことなどを、指導者や保護者の方と一緒に確認しましょう。
準備は出来たかな?さあ、出かけよう!
河原の坊には常設トイレがあります。早池峰総合休憩所の中にもトイレがあり無料で使うことができます。小田越には登山シーズン中、仮設のトイレが設置されます。登山道にトイレはありませんので、登り始める前に用を済ませましょう。
早池峰山では現在、登山者に携帯トイレの使用をすすめています。登山口か山頂避難小屋等で購入し、山頂にあるトイレで使用します。使用後は河原の坊、小田越両登山口か岳駐車場トイレにある回収ボックスに投入しましょう。
(1)天気の確認。雲が早く流れている時は、頂上に近づくに従って風が強くなっています。
(2)トイレを済ませ、体調確認。具合は悪くありませんか?
(3)服装確認。登り始めは薄着がよいでしょう。
(4)登山靴の紐確認。すべてのフックに紐を通し、きつ過ぎない程度にしっかり締めましょう。
(5)ザックの中身確認。地図、懐中電灯、食糧、飲物、カッパなどの必要最低限のものがそろっていますか?
以上がOKならストレッチ。ゆっくり筋肉をほぐし、体を登山モードに切り替えましょう。
登山者名簿に氏名、住所、連絡先などを記入し、いよいよスタートです。もし天気、体調、服装、持ち物、時間などに不安を感じた場合は、勇気を持って取りやめることが大切です。
小田越コースには、登山道の中に「合目」を表す標識や石柱が立っています。河原の坊コースには、道標の他に丸いナンバープレートが設置されています。
また、両コースとも要所にロープが張られたり、岩などに○印や矢印がペンキで書かれてあり、登山者が登山道から外れないように整備されています。それらを確認して登れば迷うことはありません。
【小田越コース】
一合目御門口からは、蛇紋岩の岩肌の峰が見え、振り返ると薬師岳が。オオシラビソの樹林を抜けて一気に視界が開けます。五合目御金蔵には、人工的な直方体の岩が立っており、祈願すれば金運に恵まれるとか…。ここから上が竜ヶ馬場です。ハイマツ帯の広々とした風景の向こうに、頂上避難小屋の赤い屋根が見えます。八合目天狗の滑り台には鉄梯子が2段あり、まるで垂直の壁を登るようなスリル感が味わえます。
御田植場に出ると木道になり、賽の河原、胎内くぐりなどを左手に見ながらのんびり歩くと間もなく頂上です。三合目付近から様々な高山植物も出迎えてくれます。
【河原の坊コース】
コメガモリ沢の沢越えは、スリルと清涼感が味わえます。七合目頭垢離で沢を離れ、視界が開けると、これから登る岩場の景色がせり上がるように迫ります。頭を下に向ければ、何度か滑り降りても怪我をしなければ長生きをする、という一枚岩の「ござ走り」。その横を抜けて行くと巨岩の「打石」。丸い穴があいており、天狗が霧にまかれて鼻をぶつけたという言い伝えがあります。コース中、最もきつい斜面を登り、鎖場で最後のスリルを味わうと、山頂広場へ到着。高山植物は五合目から見られるようになります。
晴れた日の小田越コースをモデルにします。歩き始めて約15分で林の中のケルン(三角の石積み)が見えたら、2〜3分ほど足を休め、体調確認や衣服の調整。一合目で、水分補給などに約5分。御金蔵の下でおやつを食べながら10分弱休み、梯子を登り終えたら、約5分。この場合、歩行時間は約2時間30分、休憩時間は4回を目安に約30分です。食事は頂上広場でのんびり30分ほど。
登山中の休憩は、基本的に40〜60分歩いて1回、5〜10分とるのが良いとされています。疲れたら休むのではなく、計画的に体を休めると驚くほど楽な登山ができるはずです。
小田越コースに水場はありません。河原の坊コースは、コメガモリ沢で水を汲むことができますが、頭垢離を過ぎると水場はなくなります。登山での水分補給はとても重要です。
最も新しい研究によると、最低でも[体重×歩行時間×5ml]の水分補給が必要と言われています。天候、体調などの条件にもよりますが、小学校5年生の平均体重として35kgの人が小田越コースを往復するなら、最低1ℓの水分補給が必要になる計算です。水分補給によって疲労しにくくなるということです。ただの水よりも、クエン酸やアミノ酸を含んだスポーツドリンクおすすめです。
登山の途中で天気が変わることはよくあります。景色や花を楽しみながらも常に空を見たり、五感で天候の変化を感じることが大切です。風や雨、寒さなど天候の変化に応じて衣服などの対応をしても、「怖いな、ムリだな」と思ったら、その時点でストップです。すぐ下山しましょう。
頂上付近で天気が変わったら一旦避難小屋に入り、管理人からアドバイスをもらい、下山するか様子を見るかなどの判断をしましょう。管理人は、常時無線で登山口の管理人詰所と連絡を取っています。
とにかくゆっくり登ること、できるだけ汗をかかないように登ることです。
登山というとどうしても一生懸命になり、急ぎ足で必死に登ってしまいがちですが、ふだんの生活での歩行スピードの半分以下で歩くことです。すると、息が上がらず、汗もおさえられます。スピードがゆっくりですから、足への負担も軽くなり筋肉痛も少なくなります。
上手に休んでおやつでエネルギー補給をすることも大切です。他にも疲れないコツはありますが、まずは、ゆっくり歩きから始めましょう。
早池峰山の登山道は整備されていますが、自然の中は危険もいっぱいです。蛇紋岩、木道、木の根っこは濡れているとよく滑りますし、沢の岩も滑ります。小石や砂に乗るとバランスを崩し、転びやすくなります。急斜面で転倒すると、滑り落ちる事故につながることがあります。絶対に走らないように登りましょう。
早池峰山は岩の山ですので落石の危険も。竜ヶ馬場は強風に注意する…などなど数え上げればキリがありません。“まさか”というような危険もあるのです。
その危険を察知し、避けながら登るのが、登山のおもしろさでもあります。